vol.14 気 圧
vol.14気 圧
レトルト機械の仕組みをもう一寸だけ詳しく掘り下げて考えてみようと思いました。 そして、理屈では難しいので、まずは映像イメージを広げてみようと考えました。 学校の勉強はあまり得意ではなかったけど、幸いに運動神経だけはずば抜けていたので、頭で理解し計算するよりは、繰り返し読むだけで、いつかは身体で覚えるのでは?という大雑把な感覚を生まれながらに持ち合わせているのもありがたい事実で、これは常々心から親に感謝しています。 「語学の勉強だって最初は訳が解らなくても、何回も読んでいればそのうちインスピレーションで解るようになる。 赤ちゃんだってこんなに難しい日本語をいつのまにか使えるようになっている」 ・・・そんな勝手な思い込みなどをしながら図書館へ通い、来る日も来る日も専門書を頭の中に映像として映るまで何度も訳がわからないまま無造作に読み返しました。
そのうち、本当に映像が目の前に現れ・・・解ってきました。 タンクの中で袋がなぜ破袋したのか、どうすれば破袋しないようになるのか?
蒸気をタンクに送ると、タンク内の圧力が増し、冷水で冷やすときに五目御飯が入っている袋の中とタンク内の圧力の差が生じ、小さな袋よりも、大きなタンクの圧力の方が低気圧になる為、袋が耐え切れずどうやら破袋してしまうらしい。 「タンクより先に五目御飯の入った袋の気圧を下げれば破袋しないはず。でもその方法は?」
温度が上がる時、圧力は増し、冷えるとき下がる・・・理屈が解ってくると、実に面白くなってくる。 そして、面白ついでに嘘のような本当の話(笑)。 何度も何度も失敗し、試行錯誤を繰り返し、訳も解らずただ裸でタンクと何年も付き合ううちに、タンクがだんだん友達になり、生命を感じるようになり、喋りかけてくるような気がしてきました。 「お~い!今日も来たぞー」タンクに挨拶する、「待ってたぞー!」タンクも応える。 「そろそろ、やっつけるか!」「そうだな!」付き合い始めて3年で心の通じ合った親友になりました。 来る日も来る日も、パイプの角度や長さで冷水の勢いについてありとあらゆる工夫をしてきました。 その結果、タンク内のパイプはもうどの方向も余すことなく、曲げに曲げて放射線状に角度もありとあらゆる角度で、蛛の巣のようにパイプを通してきて、もう通す隙間が余っていないような状態になっていました。
そんなとき「なあ~お前、俺(タンク)を冷やすより、お前の五目御飯の入った袋を先に冷やせばいいんじゃないか?」タンクが言ったように思いました。 タンク内に圧力がかかっているということは、冷水がうまく入らず、どんなふうにパイプを通しても結果的に五目御飯は冷やされていないのではないか? そして、タンク内に入れる冷水にタンク内の圧力以上の圧を掛けてやってみよう、その様な装置をタンク外に作ってみようと考えました。 大きなモーターを買ってきて、水を貯蔵する大きな容器を手配し、さっそく手作りで高圧水発生装置を作りタンクに流してみると、なんと、びっくり!あっさり出来てしまったではありませんか。
やっと先が見えてきた手作りの自作レトルト機。 しかしこれは完成ではなく、あくまでもアトムへの五目御飯を作るための勉強道具と経験の1ページにすぎなかったのです。
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